三菱のデリカD5は、その高い走行性能と広い室内空間から、アウトドア派のドライバーに絶大な人気を誇る一台です。特に車中泊を楽しみながら日本各地を巡る方にとって、デリカD5は最高の相棒といえるでしょう。
しかし、標準のシートアレンジだけでは、どうしても段差や凹凸が気になってしまい、ぐっすりと眠るのが難しいこともあります。そこで多くのオーナーが挑戦しているのが、ベッドの自作です。自分の体型やキャンプスタイルに合わせて作るベッドは、既製品にはない満足感を与えてくれます。
この記事では、デリカD5での車中泊をより快適にするためのベッド自作について、材料選びから具体的な作り方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。自分だけの動く秘密基地を完成させて、次のドライブをより充実したものにしましょう。
デリカD5の車中泊ベッドを自作するメリットと基礎知識

デリカD5で車中泊を始める際、まず直面するのが「どうやって平らな寝床を作るか」という問題です。自作という選択肢には、費用面だけでなく、使い勝手を極限まで追求できるという大きな魅力があります。
既製品にはない自作ならではの魅力
デリカD5専用の車中泊ベッドキットは市販もされていますが、あえて自作する最大のメリットは、自分のライフスタイルに完璧にフィットさせられる点にあります。例えば、ソロキャンプがメインなら片側だけをベッドにして、もう片方は通路や荷物置き場にするなど、自由自在なレイアウトが可能です。
また、自作であれば「床下の収納の高さをあと5センチ高くしたい」といった細かな調整も思いのままです。市販品は万人向けに作られているため、どこかで妥協が必要になりますが、自作なら一切の妥協を排した、自分にとっての100点満点の空間を作り上げることができます。
さらに、自分で設計して組み立てる過程そのものが、車中泊やドライブの楽しみを倍増させてくれます。構造を熟知しているため、万が一破損しても自分で修理や改良ができるのも、長く使い続ける上での大きなアドバンテージとなります。
7人乗りと8人乗りの構造的な違いを把握する
デリカD5には「7人乗り」と「8人乗り」の2つのモデルがあり、ベッドを自作する際にはこの違いが非常に重要になります。8人乗りは2列目がベンチシートになっているため比較的平らにしやすいのですが、7人乗りは2列目が独立したキャプテンシートになっています。
7人乗りの場合、中央に通路(ウォークスルー)があるため、ここをどう埋めるかが設計の鍵となります。シートを倒した際の高さや凹凸の出方も異なるため、まずは自分の愛車のシート形状を詳細に確認することから始めましょう。シートをどの位置までスライドさせるかによっても、確保できるベッドの全長が変わってきます。
どちらのモデルであっても、サードシートを跳ね上げた状態にするのか、あるいは完全に取り外して(構造変更の手続きが必要になる場合があります)広いスペースを確保するのか、最初に方針を決めておくことが大切です。
自作ベッドに必要な基本的な材料と道具
デリカD5のベッド自作でよく使われる主な材料は、大きく分けて「イレクターパイプ」と「木材」の2種類です。イレクターパイプは鋼鉄製のパイプにプラスチックをコーティングしたもので、軽くて丈夫、かつパズルのように組み立てられるのが特徴です。
一方、木材(2×4材や合板)は温かみがあり、加工が比較的容易であるという利点があります。木材を使用する場合は、車内の湿度変化による反りを防ぐための塗装や、ささくれによる怪我を防ぐための丁寧なサンディング(やすりがけ)が必要です。
道具としては、メジャー、プラスドライバー、六角レンチ、木材を使う場合はのこぎりや電動ドライバー、タッカー(大きなホチキスのような道具)などが必要になります。これらはホームセンターで揃えることができ、最近ではカットサービスを利用すれば、複雑な加工を自宅で行わずに済む場合も多いです。
【ベッド自作で準備すべき主なもの】
・フレーム材(イレクターパイプまたは木材)
・天板用の合板(厚さ12mm〜15mm程度がおすすめ)
・クッション材(ウレタンチップスポンジなど)
・表皮材(合皮レザーや布生地)
・メジャー、水平器、各種工具
デリカD5の車内サイズと設計の重要ポイント

車中泊ベッドを自作する上で、最も失敗しやすいのが「サイズ計測」です。デリカD5の車内は意外と複雑な形状をしており、単純な長方形のベッドを作ろうとすると、デッドスペースができたり、ドアが閉まらなくなったりすることがあります。
有効活用できる奥行きと幅を正確に測る
まず、フロントシートを一番前までスライドさせた状態で、バックドアまでの最大奥行きを計測します。デリカD5の場合、工夫次第で約180cmから190cm程度の就寝スペースを確保することが可能です。これだけの長さがあれば、大柄な男性でも足を伸ばして寝ることができます。
幅については、タイヤハウス(後輪の上の出っ張り)がある部分が最も狭くなります。ここを基準に幅を決めると、ベッド全体が細くなってしまいます。タイヤハウスを避けるように脚を配置し、天板をタイヤハウスの形状に合わせてカットすることで、車内幅いっぱいの広々としたベッド面を実現できます。
また、ベッドの高さを決める際は「天井までのクリアランス」と「床下収納の容量」のバランスが重要です。座った時に頭が天井に当たらない高さを確保しつつ、キャンプ道具や着替えを効率よく収納できる高さを探りましょう。一般的には、床から30cm〜35cm程度の高さに設定する人が多いようです。
シートの凹凸と段差をどう処理するか
デリカD5のシートを倒した際の凹凸は、そのままでは安眠の妨げになります。ベッド自作のアプローチには、シートを完全に覆い隠す「高床式」と、シートの隙間を埋める「埋め込み式」の2パターンがあります。
高床式は、シートの上に完全にフレームを組む方法です。これのメリットは、完全なフラット面が作りやすいことと、シート下の空間をすべて収納として使えることです。ただし、室内高が低くなるため、圧迫感を感じやすくなるのがデメリットです。座ってくつろぐことが多い場合は、低めの設計を心がける必要があります。
一方、シートの凹凸に合わせてクッションを配置するタイプは、室内高を広く保てますが、完全なフラットを作るのが非常に難しく、熟練の技術が必要です。初心者が自作する場合は、イレクターパイプなどでフレームを組み、その上に天板を載せる高床式の方が失敗が少なく、快適な結果を得られやすいでしょう。
乗り降りのしやすさと安全性の考慮
設計図を書く段階で忘れがちなのが、実際の「動線」です。スライドドアからスムーズに乗り降りできるか、バックドアを開けた時に荷物が崩れ落ちないか、といった点を確認しておきましょう。特に、夜中にトイレに行く際の移動ルートを考えておかないと、寝ている家族を起こしてしまったり、足をぶつけたりすることになります。
また、走行中の安全確保も極めて重要です。自作ベッドが走行中に動いたり、万が一の急ブレーキで前方に飛んでいったりしないよう、車両側のフックやボルト穴を利用して固定する仕組みを取り入れましょう。デリカD5にはタイダウンフック(荷物固定用の金具)が備わっているため、これを利用するのがスマートです。
イレクターパイプで作る頑丈なベッドフレーム

デリカD5の車中泊ベッド自作において、最も人気のある素材がイレクターパイプです。強度、軽さ、加工のしやすさのバランスが良く、特別な工具がなくても本格的なフレームを組み上げることができます。
パーツ選びとカットのコツ
イレクターパイプには、様々な長さのパイプと、それらを繋ぐジョイントパーツが豊富に用意されています。設計図を元に、どのジョイントがいくつ必要かを正確に洗い出しましょう。ジョイントには、パイプを差し込んで専用の接着剤で固定するプラスチックタイプと、ボルトで締め付けるメタルジョイントの2種類があります。
おすすめは、主要な箇所にメタルジョイントを使用することです。接着剤固定だと後から分解や調整ができませんが、メタルジョイントなら六角レンチ一本で組み直しが可能です。デリカD5の車内で微調整を繰り返しながら完成度を高めるには、この「やり直しができる」という点が非常に大きなメリットとなります。
パイプのカットは、専用のパイプカッターを使用します。くるくると回すだけで、初心者でも驚くほど綺麗に、かつ正確な長さでカットできます。ホームセンターによってはカット済みのパイプも売っていますが、1ミリ単位の調整が必要になる自作では、自分専用のパイプカッターを1つ持っておくことを強くおすすめします。
強度を高める補強の入れ方
デリカD5の広い車内をカバーするベッドフレームは、中央部分に荷重が集中しやすくなります。大人2人が横になっても「たわみ」や「揺れ」が出ないよう、適切な位置に支柱(脚)を配置しましょう。特に、一番体重がかかる腰のあたりには、左右だけでなく中央にも脚を立てると安定感が格段に増します。
また、前後の揺れに対しても対策が必要です。フレームの四隅に斜めの補強(筋交い)を入れることで、走行中や寝返りを打った時の不快なギシギシ音を抑えることができます。イレクターパイプ専用のジョイントには、斜め45度に接続できるパーツもあるため、これらを活用して強固な骨組みを作り上げましょう。
脚の底面には、専用のアジャスターやインナーキャップを取り付けます。これにより、フロアの微妙な傾斜に合わせて高さを微調整できるようになり、どこでも完璧な水平を保つことが可能になります。また、車両の床材を傷つけないための保護としての役割も果たしてくれます。
デリカD5専用の設計テクニック
デリカD5特有のポイントとして、サードシートの跳ね上げ部分の干渉があります。シートを付けたままベッドを組む場合は、パイプがシートの肉厚部分に当たらないよう、巧みに避けるラインを通す必要があります。あえてサードシートの脚を利用してフレームを支えるような設計にすれば、部品点数を減らしつつ固定強度を高めることも可能です。
また、二列目のシートを倒した際、その上にフレームを這わせる場合は、シートへのダメージを防ぐためにパイプにクッション材を巻くなどの配慮も忘れないようにしましょう。デリカD5のシートは上質な素材が使われているため、長期間の設置による「跡」がつかないよう工夫することが、愛車を大切に乗り続けるコツです。
イレクターパイプのフレームができたら、天板を載せる前に必ず一度車内に仮置きして、ドアの開閉やシートとの干渉をチェックしてください。接着剤で固定するのは、すべての確認が終わった最後の手順です。
快適な眠りを左右する天板の作成とクッション加工

頑丈なフレームができたら、次は実際に体が触れる天板部分の作成です。ここでのこだわりが、翌朝の目覚めの良さに直結します。デリカD5の車内を優雅なベッドルームへと変えていきましょう。
合板のカットと曲線への対応
天板には、厚さ12mmから15mm程度の合板(コンパネやランバーコア材)を使用するのが一般的です。デリカD5の車内は完全な直線ではないため、特に後方のDピラー付近などは壁面がカーブしています。ここを四角いままにすると大きな隙間ができてしまい、スマホや小物が落ちる原因になります。
綺麗な曲線を作るコツは、型紙を作ることです。新聞紙やダンボールを現物に合わせて切り抜いて型紙を作り、それを合板に写してジグソー(電動のこぎり)でカットします。少し手間はかかりますが、壁にピタッと沿った天板は、自作とは思えないほどの完成度を感じさせてくれます。
また、天板をいくつかのパーツに分割することも重要です。一枚板で作ってしまうと、重くて車内への出し入れが困難になりますし、下の荷物を取り出す際にも不便です。デリカD5のシート分割に合わせて3〜4分割程度にしておけば、状況に応じて一部だけを跳ね上げたり、椅子として使ったりといったアレンジが効くようになります。
クッション材の選び方と貼り方
合板の上に直接寝るのは硬すぎるため、クッション材を重ねます。おすすめは、高密度の「ウレタンチップスポンジ」です。厚さ30mmから40mm程度のものを選ぶと、底付き感がなく快適に眠れます。さらにその上に柔らかい「仕上げ用ウレタン」を10mm程度重ねる2層構造にすると、高級マットレスのような寝心地になります。
クッション材を合板に貼り付ける際は、スプレーのりを使用します。端までしっかり糊付けし、ウレタンが合板からズレないように固定します。このとき、ウレタンの角を少し削っておくと、後で布を巻いた時に角が丸くなり、見た目が非常に美しく仕上がります。
クッション材は、時間が経つと少しヘタってくることを考慮し、やや硬めのものを選ぶのが長く使い続けるポイントです。デリカD5の車内は夏場に高温になることもあるため、熱に強い接着剤や素材を選ぶことも意識しましょう。
表皮(レザー・布)の仕上げテクニック
最後に、見た目と肌触りを決める表皮を貼ります。車中泊では飲み物をこぼしたり、雨の日に濡れたりすることもあるため、メンテナンスが容易な「PVCレザー(合成皮革)」が非常に人気です。汚れをサッと拭き取れるだけでなく、高級感も演出できます。
表皮を貼る際は、合板の裏側で「タッカー」を使って固定していきます。まず四辺の中央を固定し、次に角の部分をシワが寄らないように引っ張りながら止めていくのが綺麗に仕上げるコツです。角の処理は、折り紙のように丁寧に畳むことで、プロのような仕上がりになります。
裏面もそのままにせず、安価な不織布などをタッカーで留めておくと、フレームと擦れた時の異音防止になりますし、荷物を出し入れする際に木材のささくれで手を傷つける心配もなくなります。細かな部分まで手を抜かないことが、一生モノの自作ベッドを作る秘訣です。
| 素材名 | 特徴 | おすすめの用途 |
|---|---|---|
| PVCレザー | 水に強く汚れが落ちやすい。カラー豊富。 | メインの天板表皮。手入れ重視。 |
| ウレタンチップ | 硬めでしっかり体を支える。 | クッションの下層部。底付き防止。 |
| ラワン合板 | 安価で強度が安定している。 | 天板の土台。コスト重視。 |
| シナ合板 | 表面が滑らかで見た目が美しい。 | 天板の土台。仕上がり重視。 |
デリカD5での車中泊をさらに充実させる工夫

ベッドが完成したら、さらに一工夫加えることで、デリカD5での車中泊は驚くほど快適になります。居住性を高めるためのアイデアをいくつかご紹介します。
床下収納の最大活用と整理術
自作ベッドを「高床式」にした最大の恩恵は、広大な床下収納スペースです。しかし、広いがゆえに奥に入れたものが取り出しにくくなるという問題も発生します。そこで便利なのが、引き出し式のコンテナやスライドレールの導入です。
キャンプギア、調理器具、着替えなどをジャンルごとにコンテナに分け、ベッド下に滑り込ませます。デリカD5のテールゲート側から、サッと引き出せるように配置しておけば、設営や撤収の時間が大幅に短縮されます。また、イレクターパイプのフレーム自体にネットを張ることで、天井付近のデッドスペースを小物入れとして活用することも可能です。
デリカD5は車高が高いため、ベッドの下にポータブル電源を設置するのも良いアイデアです。ポータブル電源があれば、冬場の電気毛布や、夏場のサーキュレーターの使用が快適になり、まさに「動くホテル」のような環境が整います。配線がベッドの上に出てこないよう、天板に小さな穴を開けてコードを通すといった工夫も自作ならではの楽しみです。
窓の目隠しと換気対策は必須
快適な睡眠には、プライバシーの確保と温度調節が欠かせません。車中泊において「サンシェード(目隠し)」は必須アイテムです。デリカD5専用のシェードも売られていますが、銀マットを使って窓の形にカットすれば安価に自作できます。冬場の断熱効果も高まり、結露の防止にも役立ちます。
また、夏場の車中泊では換気が命です。デリカD5のスライドドアやバックドアに、マグネット式の防虫ネット(網戸)を装着できるようにしておきましょう。夜風を取り入れながら虫の侵入を防ぐことで、エアコンをかけっぱなしにせずとも涼しく過ごすことができます。
さらに、100円ショップなどで手に入る小型のLEDランタンをベッドの柱に固定したり、マグネットで天井にくっつけたりすることで、夜間の居住性が格段にアップします。デリカD5の車内は金属部分が露出している箇所も多いため、マグネットを活用した収納や照明の配置は非常に有効なテクニックです。
季節に合わせた寝具の選び方
自作ベッドが完成したとはいえ、家庭用の布団を持ち込むだけでは、季節によっては不十分なこともあります。冬場であれば、シュラフ(寝袋)と家庭用布団を組み合わせる、あるいはダウンのブランケットを用意するなど、「断熱」を意識した寝具選びが重要です。
車内の温度は外気温に大きく左右されます。特にデリカD5は窓面積が広いため、冷気が入り込みやすい構造です。自作ベッドの天板の上に、さらに薄手のキャンプ用マット(エアーマットやインフレーターマット)を一枚敷くだけでも、保温性とクッション性が劇的に向上します。
夏場は、接触冷感素材のシーツを天板に被せるのがおすすめです。PVCレザーは汗を吸わないため、夏場はベタつきを感じることがあります。通気性の良いタオル地のカバーや冷感パッドを敷くことで、不快感を解消し、深い眠りにつくことができるようになります。こうした細かな調整ができるのも、自分の車を熟知しているからこその楽しみです。
デリカD5の車中泊ベッド自作まとめ
デリカD5での車中泊を劇的に変えるベッドの自作は、準備と設計さえしっかり行えば、DIY初心者でも十分に挑戦可能なプロジェクトです。自分自身の体型や使い方に合わせた世界に一つだけのベッドは、ドライブの疲れを癒やす最高の空間を提供してくれます。
まずは愛車のサイズを丁寧に測り、イレクターパイプや木材といった素材の特徴を理解することから始めましょう。7人乗りか8人乗りかによって異なるシートの形状を活かしつつ、高床式のフレームを組むことで、フラットな寝心地と豊富な収納スペースを両立させることができます。天板にクッション材とレザーを貼る仕上げを丁寧に行えば、既製品に劣らない高級感のある仕上がりも夢ではありません。
ベッドが完成した後は、収納の工夫や窓の目隠し、季節ごとの寝具選びなどを通じて、さらに自分好みの空間へとアップデートしていく楽しみが待っています。デリカD5という頼もしい相棒と共に、自作ベッドを載せて、まだ見ぬ景色を探しに行く新しい旅に出かけてみませんか。手間をかけて作ったベッドで過ごす夜は、きっと忘れられない特別な思い出になるはずです。



