車中泊の旅に憧れて、自分の車に合ったベッドをDIYしたいと考えている方に人気の「イレクターパイプ」。ホームセンターなどで手軽に購入でき、加工のしやすさからDIY初心者でも挑戦しやすい素材です。しかし、自分でベッドを作る上で最も気になるのが「強度」ではないでしょうか。「大人が寝ても本当に大丈夫?」「走行中の振動で壊れたりしない?」といった不安を抱く方も少なくありません。
この記事では、そんなイレクターパイプを使った車中泊用ベッドの強度に焦点を当て、安心して使えるベッドを作るための材料選びから設計のコツ、強度を高める具体的なテクニックまで、やさしくわかりやすく解説します。この記事を読めば、あなたの車中泊がより安全で快適なものになるはずです。
イレクターパイプベッドの基本と車中泊でのメリット

イレクターパイプで車中泊用のベッドを作ることは、多くのメリットがあります。しかし、まずはイレクターパイプがどのような素材なのか、そしてなぜ車中泊に適しているのかを理解することが大切です。ここでは、イレクターパイプの基本的な知識と、車中泊ベッドとして利用する際の魅力について掘り下げていきます。
イレクターパイプとは?初心者でも扱いやすいDIYの味方
イレクターパイプは、一言でいうと「スチール製のパイプにプラスチックをコーティングしたDIY用の部材」です。 この構造のおかげで、金属の丈夫さとプラスチックの扱いやすさ、錆びにくさを両立しています。 専用のパイプカッターを使えば女性の力でも簡単に 원하는長さに切断でき、豊富な種類のジョイント部品と組み合わせることで、接着剤やネジで様々な形の骨組みを自由に作ることが可能です。 木材のように切断面の処理に手間がかかったり、金属加工のように専門的な技術や工具が必要だったりすることがないため、DIY初心者の方でも非常に挑戦しやすいのが大きな特徴です。 また、比較的安価でホームセンターなどで手軽に入手できる点も、DIYの材料として広く普及している理由の一つです。
なぜ車中泊ベッドにイレクターパイプが選ばれるのか?
イレクターパイプが車中泊用のベッド作成に最適な理由はいくつかあります。最大のメリットは、車の限られたスペースや複雑な形状に合わせて、オーダーメイドのようにぴったりなベッドを設計できる点です。 市販のベッドキットでは対応できないような車種や、自分の使い方に合わせた特殊な形状(例えば、荷物スペースを確保しつつ一人用の就寝スペースを作るなど)も実現可能です。
さらに、木製のベッドに比べて軽量なため、車の燃費への影響を抑えられます。 分割して組み立てる設計にすれば、不要な時は分解してコンパクトに収納することもできます。 このように、加工の自由度が高く、軽量で、状況に応じて形を変えられる柔軟性が、刻々と変化する車内の状況に対応しなければならない車中泊のスタイルに非常にマッチしているのです。
イレクターパイプベッドの基本的な構造
イレクターパイプで作るベッドの基本構造は、非常にシンプルです。まず、ベッドの土台となる「脚」を複数本作り、その脚を縦横のパイプで繋いで「フレーム(骨組み)」を形成します。そして、そのフレームの上にコンパネなどの「天板」を乗せることで、人が寝るための面が完成します。
この基本的な構造に、横揺れを防ぐための「筋交い(斜めの補強材)」を追加したり、脚の数を増やしたりすることで強度を高めていきます。 車種によっては、シートを倒した際の段差を解消するように脚の高さを左右で変えたり、一部のフレームを折りたたみ式にしたりと、様々な工夫を凝らすことができます。 このように、基本的な構造は単純ですが、アイデア次第でいくらでも応用が利くのがイレクターパイプベッドの面白さでもあります。
最重要!イレクターパイプベッドの強度を左右するポイント

イレクターパイプで快適なベッドを作るためには、何よりもまず「強度」の確保が不可欠です。設計や組み立ての自由度が高い反面、強度に関する知識がないまま作ってしまうと、思わぬ事故につながる危険性もあります。ここでは、ベッドの強度を決定づける重要な4つのポイントについて詳しく解説します。
パイプの種類と太さの選び方
一般的にDIYで使われるイレクターパイプの太さは直径28mmのものです。矢崎化工の公式情報によると、このΦ28イレクターパイプは、900mmの長さのパイプの中央に荷重をかけた場合、最大で約70kgf(重量キログラム)の荷重に耐えることができます。 これはあくまで一点に集中した場合の静的な荷重の目安であり、ベッドのように複数のパイプで荷重を分散させる構造の場合は、さらに大きな重さに耐えることができます。
また、通常のプラスチックコーティングされたパイプの他に、より高い強度を持つ「メタリックパイプ」という選択肢もあります。材質は同じスチールですが、表面処理の違いなどにより強度が高められています。コストは上がりますが、特に体重がかかる部分や長いスパン(柱と柱の間)で使用する部分に採用すると、ベッド全体の剛性を大きく向上させることができます。
ジョイントの種類と選び方(プラスチック製 vs メタル製)
パイプ同士を連結するジョイントは、ベッドの強度を支える心臓部とも言える非常に重要なパーツです。ジョイントには大きく分けて「プラスチックジョイント」と「メタルジョイント」の2種類があります。
- プラスチックジョイント: 軽量で錆びにくく、価格が安いのが特徴です。 イレクター専用の接着液(サンアロー)を使ってパイプと化学的に溶着させることで、非常に強固に固定できます。 ただし、一度接着すると分解はジョイントを破壊するしかなく、やり直しが効かないというデメリットがあります。
- メタルジョイント: スチール製で、ボルトとナットで締め付けて固定します。 プラスチック製に比べて圧倒的に強度が高く、繰り返し分解・組み立てが可能なため、設計の変更や微調整が容易です。 価格は高くなりますが、特に荷重がかかる重要な部分や、将来的に仕様変更する可能性がある箇所への使用が推奨されます。
コストと強度のバランスを考え、基本はプラスチックジョイントで構成し、特に負荷のかかるコーナー部分や脚の付け根などにメタルジョイントを効果的に使う「ハイブリッド方式」がおすすめです。
設計が強度を大きく左右する!基本の骨組みと考え方
どれだけ良い材料を使っても、設計が悪ければ十分な強度は得られません。強度を確保するための設計の基本は「荷重の分散」です。人が寝たときにかかる重さが、一点に集中せず、ベッドフレーム全体、そして車の床面へと効率よく分散されるように考える必要があります。
具体的には、格子状にパイプを組むことで、縦横のパイプが互いに支え合い、強度を高めることができます。 また、脚の数を増やし、設置間隔を短くすることも非常に有効です。特に、腰回りなど体重が集中する部分の下には、重点的に脚を配置すると良いでしょう。 設計段階で、どこに一番重さがかかるかをシミュレーションし、その部分を重点的に補強する意識を持つことが、失敗しないベッド作りの第一歩となります。
天板の選び方と固定方法も強度に影響
フレームの上に置く天板も、ベッド全体の強度に大きく貢献します。天板がフレームと一体化することで、面全体で荷重を受け止め、フレームの歪みを抑制する効果があるからです。 一般的には、ホームセンターで入手しやすい「構造用合板(コンパネ)」がよく使われます。
厚みは12mm程度のものが加工のしやすさと強度のバランスが良いでしょう。天板をフレームに固定する際は、ただ乗せるだけでなく、専用のジョイント部品(J-113Aなど)やサドルバンド、ビスなどを使って数カ所を固定することで、フレームとの一体感が増し、横揺れに対する強度が格段に向上します。 天板を複数枚に分割する場合は、それぞれの板がしっかりとフレームの上に乗るように設計することが重要です。
実践!車中泊用イレクターパイプベッドの強度を高める作り方

基本的な設計のポイントを理解したら、次はいよいよ実践的な強度アップのテクニックです。少しの工夫でベッドの安全性と耐久性は大きく向上します。ここでは、誰でも簡単に取り入れられる具体的な4つの方法をご紹介します。
筋交い(すじかい)を入れて横揺れを防ぐ
ベッドの強度アップで最も効果的な方法の一つが「筋交い」を入れることです。筋交いとは、四角形の骨組みに対して斜めに入れる補強材のことで、これによりフレームの形状が安定し、横方向からの力(揺れ)に対して非常に強くなります。 車は走行中に常に細かく振動しており、停車中でも人の乗り降りや寝返りによってベッドには横方向の力が加わります。
筋交いがないと、四角いフレームは平行四辺形のように歪みやすく、ジョイント部分に想定外の負荷がかかり、破損の原因となりかねません。 特にベッドの長手方向(車の進行方向)と、幅方向の両方に筋交いをバランス良く配置することで、あらゆる方向の揺れに対して効果を発揮し、ベッドのきしみ音の軽減にも繋がります。
荷重を分散させる「脚」の増やし方と配置
ベッドの脚は、上半身の重さを車の床へと伝える重要な柱です。この脚の数が少なかったり、配置が悪かったりすると、特定のパイプやジョイントに荷重が集中してしまいます。強度を確保するためには、脚を適切な本数、適切な位置に配置することが重要です。
最低でも四隅には必ず脚を設け、ベッドの全長が長い場合は中間にも追加します。 目安として、パイプのスパン(脚から脚までの距離)が長くなりすぎないように設計しましょう。特に、就寝時に腰がくるあたりは最も体重がかかるポイントなので、その直下に脚を追加すると安定感が格段に増します。車の床面は平らではないことも多いため、アジャスター付きのジョイント(JG-12 SETなど)を脚の先端に取り付けると、ガタつきなく安定して設置できます。
接着剤を併用してジョイントの強度をアップさせる
プラスチックジョイントを使用する場合、イレクターパイプ専用の接着液「サンアロー」で確実に接着することが強度の基本となります。 この接着液は、単に接着するだけでなく、パイプの表面とジョイントのプラスチックを溶かして一体化させる「溶着」という仕組みで固定します。 これにより、ジョイントが抜けるのを防ぎ、非常に高い固定力を得ることができます。
接着作業のコツは、まず1〜2滴垂らして仮固定し、全体の歪みなどを確認してから、ジョイントとパイプの隙間全体に行き渡るように本接着することです。 一度接着すると外せなくなるため作業は慎重に行う必要がありますが、この一手間がベッドの長期的な安全性を保証します。 メタルジョイントを使用する場合でも、振動でボルトが緩む可能性を考慮し、緩み止め剤を少量塗布しておくとさらに安心です。
定期的なメンテナンスと強度チェックの重要性
イレクターパイプベッドが完成した後も、安心して使い続けるためには定期的なメンテナンスが欠かせません。特に車中泊で長期間使用すると、走行中の振動や繰り返しの荷重によって、思いがけない部分に緩みや歪みが生じることがあります。少なくとも数回の車中泊ごと、あるいは長距離移動の後には、各ジョイントに緩みがないかを手で揺すって確認しましょう。
特にメタルジョイントを使用している場合は、ボルトの増し締めを定期的に行うことが重要です。プラスチックジョイントの場合も、接着部分にひび割れなどが発生していないかを目視でチェックします。もし異常を見つけたら、早めに補強や部品の交換を行いましょう。こうした地道なチェックが、安全で快適な車中泊を長く楽しむための秘訣です。
車種別・目的別!イレクターパイプベッドの強度設計事例

イレクターパイプベッドの魅力は、車種や使う人の目的に合わせて自由に設計できる点にあります。ここでは、代表的な車のタイプや利用シーンに応じた強度設計のポイントを具体的に見ていきましょう。
軽バン・ハイトワゴン向けの省スペース&高強度設計
N-VANやエブリイ、アトレーといった軽バンや、N-BOXなどのハイトワゴンは、室内空間が限られているため、いかにスペースを有効活用するかが設計の鍵となります。 ベッドを設置すると他の荷物を置くスペースがなくなるため、ベッド下を大きな収納スペースとして活用できるような高さのある設計が人気です。
この場合、脚が長くなるため横揺れに弱くなりがちなので、筋交いを効果的に入れることが必須になります。また、スペース効率を上げるために脚の本数を最小限にしたいところですが、強度の観点からは、車のボディやタイヤハウスなどを支えとして利用する工夫も有効です。例えば、窓枠や後部座席の背もたれにフレームの一部を乗せることで、脚の数を減らしつつ安定性を確保できます。 一人で使用することが多い場合は、片側にベッドを寄せて、乗り降りや荷物のためのスペースを確保するレイアウトもおすすめです。
ミニバン・SUV向けの分割式・可変式ベッドの強度確保術
ヴォクシーやセレナ、デリカD5といったミニバンやSUVは、乗車人数や荷物の量に応じてシートアレンジを変える機会が多い車種です。 そのため、ベッドも常設ではなく、必要に応じて設置・撤去できる分割式や折りたたみ式が便利です。 分割式ベッドの強度を確保するポイントは、分割したそれぞれのユニットが単体でもしっかりと自立できる構造にすることです。
ユニット同士を連結する部分には、荷重がかかってもズレたり外れたりしないよう、メタルジョイントを使用したり、はめ込み式の構造にするなどの工夫が求められます。また、2列目シートや3列目シートを倒した複雑な床面の凹凸に合わせてフレームを組む必要があるため、正確な採寸と、アジャスター機能付きの脚を活用して水平を保つことが非常に重要です。
1人での利用か2人での利用かで変わる強度設計
当然ながら、ベッドを1人で利用するのか、2人で利用するのかによって求められる強度は大きく異なります。単純に考えても、就寝する人の体重は2倍になります。2人で使用することを想定する場合は、設計段階から全ての部材選定や構造をより頑丈なものにする必要があります。具体的には、パイプの本数を増やして格子状のマス目を細かくする、脚の数を増やす、プラスチックジョイントではなく強度の高いメタルジョイントを多用する、といった対策が考えられます。
天板も、1枚板ではなく中央に支えのパイプを入れた上で2枚に分けるなど、たわみが出ないような工夫が必要です。耐荷重に余裕を持たせた設計を心がけることで、安心して2人での車中泊を楽しむことができます。
イレクターパイプベッド製作時の注意点と強度以外のポイント

強度計算や設計が完璧でも、実際の製作段階でのちょっとしたミスが、ベッドの完成度や安全性に影響を与えることがあります。また、強度以外にも、快適な車中泊を実現するために知っておきたいポイントがいくつか存在します。ここでは、製作時の注意点と、見落としがちな快適性に関するポイントを解説します。
正確な採寸とパイプカットの重要性
DIYの基本中の基本ですが、イレクターパイプベッド作りにおいて採寸の正確さは、最終的な強度と安定性に直結します。 車内は一見すると平らで真っ直ぐに見えても、実際には湾曲していたり、傾斜があったりする場所がほとんどです。 メジャーを使って何度も丁寧に寸法を測り、設計図に正確に落とし込むことが重要です。
そして、設計図通りにパイプをカットする精度も同様に大切です。パイプの長さが数ミリ違うだけで、組み立てた際に歪みが生じ、特定のジョイントに負荷が集中したり、ガタつきの原因になったりします。 パイプカッターを使う際は、刃をパイプに対して垂直に当て、焦らずゆっくりと回すのがきれいにカットするコツです。正確な採寸と丁寧なカットが、頑丈で安定したベッドの土台となります。
走行中のガタツキ音・異音対策
ベッドを設置して走行してみると、「カタカタ」「ギシギシ」といった不快な異音に悩まされることがあります。これは、ベッドのフレームが車のボディと接触したり、ジョイント部分が振動で擦れたりすることで発生します。せっかくの快適な就寝スペースも、移動中にずっと異音がしていてはストレスになってしまいます。対策としては、まずベッドの脚が床面にしっかりと固定され、ガタついていないかを確認します。
アジャスターで微調整したり、脚の下にゴムシートを敷くだけでも効果があります。また、フレームが車の内張りなどに接触しそうな部分には、あらかじめクッションテープやフェルトを貼っておくと良いでしょう。ジョイント部分のきしみ音に対しては、一度分解して組み直したり、潤滑剤を少量塗布したりすることで改善される場合があります。
安全のために知っておきたい耐荷重の目安
イレクターパイプのメーカーである矢崎化工は、棚や梁(はり)として使用した場合の強度目安を公開しています。 例えば、プラスチックジョイントを使用して90cm四方の棚を作った場合の最大積載質量は170kg(静荷重)とされています。 しかし、これはあくまで均等に荷重がかかった場合の参考値であり、ベッドのように人の動きによって動的な荷重がかかる場合や、衝撃が加わる場合は、この数値よりも低く見積もる必要があります。
設計したベッドがどれくらいの重さに耐えられるかを正確に計算することは難しいですが、パイプの本数を増やしたり、筋交いを入れたり、メタルジョイントを使用したりすることで、安全マージンを大きく確保することができます。 少なくとも、使用する人の体重の1.5倍から2倍程度の重さには余裕で耐えられるような、頑丈な設計を心がけることが安全につながります。
イレクターパイプベッドの強度を理解して快適な車中泊を

この記事では、イレクターパイプを使った車中泊用ベッドの「強度」に焦点を当て、材料選びから設計、強度を高める具体的な方法までを解説しました。
イレクターパイプは、車の形状に合わせて自由に設計できる素晴らしいDIY素材ですが、その自由度の高さゆえに、強度に対する正しい知識が不可欠です。パイプやジョイントの種類を適切に選び、荷重が分散されるような設計を心がけることが基本となります。
さらに、横揺れを防ぐ「筋交い」の設置、荷重を支える「脚」の適切な配置、そして専用接着剤による確実な固定といった一手間を加えることで、ベッドの安全性は飛躍的に向上します。 また、軽自動車やミニバンといった車種ごとの特性や、1人で使うか2人で使うかといった目的によって最適な設計は変わってきます。完成後も定期的なメンテナンスを怠らないことが、長く安心して使い続けるための秘訣です。
これらのポイントをしっかりと押さえれば、DIY初心者の方でも、市販品に負けないほど頑丈で快適な、自分だけのオリジナル車中泊ベッドを作ることが可能です。強度への不安を解消し、安全で楽しい車中泊の旅に出かけましょう。


