近年、テレビやSNSの影響でキャンプや車中泊が大きなブームとなっています。自然の中で過ごす時間は非日常的で、心身ともにリフレッシュできる素晴らしい体験です。しかし、その一方で「にわかキャンパー」と呼ばれる人々の行動が、キャンプ場や道の駅などで問題視されることが増えてきました。
「にわか」という言葉には少しネガティブな響きがありますが、誰でも最初は初心者です。大切なのは、経験の浅さではなく、周囲への配慮や自然に対するマナーを知っているかどうかという点にあります。これからキャンプや車中泊を始めたい方、あるいは始めたばかりの方が、知らず知らずのうちに「迷惑な人」にならないために、どのような行動が問題になりやすいのかを知っておくことは非常に有益です。
この記事では、いわゆる「にわかキャンパー」に見られがちな特徴や、周囲を困らせてしまう具体的な行動、そしてスマートにアウトドアを楽しむためのポイントを詳しく解説します。これらを理解して、初心者でも「わかってるね!」と思われるような素敵なキャンパーを目指しましょう。
【にわかキャンパーの特徴】見た目や装備でありがちなポイント

キャンプ場に到着して周囲を見渡すと、なんとなく「あの人たちは慣れていないのかな?」と感じるグループを見かけることがあります。もちろん、道具が新しいこと自体は悪いことではありませんが、経験不足が装備の選び方や使い方に表れてしまうことはよくあります。ここでは、見た目や装備に見られる典型的な特徴を紹介します。
高価なブランドギアで全身を固めている
キャンプを始めるにあたって、形から入ることは決して悪いことではありません。しかし、最初から有名な高級アウトドアブランドのギアで全身を固めているのに、使い方がわからず戸惑っている姿は、どうしても「にわか」という印象を与えてしまいがちです。
例えば、最高級のテントやタープを購入したものの、設営手順を全く予習してこなかったために、説明書と睨めっこしながら数時間も悪戦苦闘しているケースがあります。また、ハイスペックすぎる道具は、初心者にとって扱いが難しいことも少なくありません。自分のスキルや目的に合った道具を少しずつ揃えていく過程も、キャンプの楽しみの一つです。
タグがついたままの新品アイテムが多い
キャンプ場で道具を取り出した瞬間に、値札やタグがついたままになっているのも、初心者によくある光景です。購入したばかりのギアをフィールドで初めて開封するのはワクワクするものですが、これは事前の準備不足を露呈しているとも言えます。
事前に自宅で開封して検品をしておかないと、いざ使おうとしたときに部品が足りなかったり、使い方がわからなかったりするトラブルに直面します。特にバーナーやランタンなどの火器類は、現地で初めて点火しようとしてもうまくいかないことが多いものです。一度自宅で開封し、仕組みを理解しておくことは、スムーズなキャンプライフへの第一歩です。
自然環境に適さない服装をしている
アウトドアフィールドは、街中とは環境が全く異なります。しかし、SNS映えを意識しすぎたり、自然を甘く見ていたりして、場違いな服装で来てしまう人もいます。例えば、動きにくいタイトなスカートや、土の上を歩くのに適さない高いヒールの靴などが挙げられます。
また、夏場のキャンプ場は虫が多いため、露出の多い服装は虫刺されのリスクを高めますし、夜間は急激に冷え込むこともあります。冬場であれば、街中の防寒着では全く歯が立たないことも珍しくありません。機能性よりもファッション性を優先しすぎると、快適に過ごせないばかりか、周囲から「危ないな」と心配されてしまうことにもなりかねません。
車の積載が整理されていない
オートキャンプや車中泊では、荷物を車に積み込む「積載」の技術も重要です。慣れていない人の車内を見ると、荷物が無造作に詰め込まれていて、後方の視界が遮られていたり、ドアを開けた瞬間に荷物が雪崩のように落ちてきたりすることがあります。
必要なものがすぐ取り出せないと、設営や撤収のたびにすべての荷物をひっくり返すことになり、時間と労力の無駄になります。また、撤収時に来たときと同じように積み込めず、帰りの車内がさらにカオスな状態になってしまうのも「あるある」です。パズルのように隙間なく、かつ使い順序を考えて積載できるようになると、一気にベテラン感が漂います。
キャンプ場での行動パターンに見る「にわか」な振る舞い

装備以上にその人の経験値やマナー意識が現れるのが、キャンプ場での立ち振る舞いです。自分たちは楽しんでいるつもりでも、周囲のキャンパーにストレスを与えてしまっていることがあります。ここでは、行動面で「にわか」と思われやすいポイントを解説します。
SNS用の撮影に夢中で周囲が見えていない
美しい風景やこだわりの料理、おしゃれなテントサイトを写真に収めてSNSにアップするのは、現代のキャンプの楽しみ方の一つです。しかし、撮影すること自体が目的化してしまい、マナーがおろそかになっているケースが見受けられます。
例えば、映える写真を撮るために他人のサイトに勝手に入り込んだり、夜遅くまで明るいライトを照らして撮影会を続けたりする行為は迷惑千万です。また、料理が冷めるのも構わずに何十枚も写真を撮り続け、結局食べる頃には美味しくなくなっているという本末転倒な状況もよくあります。画面の中の世界だけでなく、目の前の自然や仲間との時間を大切にしたいものです。
夜遅くまで大声で騒いだり音楽を流したりする
キャンプ場の夜は想像以上に静かです。風の音や虫の声を楽しむ時間帯に、大音量で音楽を流したり、大きな笑い声を上げたりするのは、最も嫌われる行為の一つです。特にアルコールが入ると声のボリューム調整ができなくなりがちです。
自分たちにとっては楽しい宴会でも、薄い布一枚隔てた隣のテントにいる人にとっては騒音でしかありません。多くのキャンプ場には、22時頃を目安とした「クワイエットタイム(静粛時間)」が設けられています。この時間を過ぎたらランタンの明かりを落とし、声のトーンを下げて静かに過ごすのが、キャンパーとしての最低限のルールです。
他人のサイトを平気で横切る
キャンプ場の区画サイトは、借りている人の「家」の敷地と同じです。しかし、トイレや炊事場に行くための近道だからといって、他人のサイト内を堂々と横切る人がいます。これは、他人の家の庭を勝手に通り抜けるのと同じくらい失礼な行為です。
特に、テントを固定しているロープ(ガイロープ)は夜間には見えにくく、足を引っ掛けて転倒する危険性もあります。ロープに躓けば、テントが倒壊したり、ギアが破損したりするトラブルにも繋がります。どれだけ遠回りになったとしても、必ず通路を歩くように心がけましょう。
食事の準備や片付けが計画的でない
キャンプ飯は楽しみの一つですが、あまりにも凝った料理を作ろうとして失敗したり、準備不足で夕食が深夜になったりするのも、初心者にありがちな光景です。食材を買いすぎて大量に余らせてしまったり、調理器具の使い方がわからず生焼けの料理ができあがったりすることもあります。
また、食事の後の片付けを面倒がって翌朝まで放置するのもNGです。野生動物が食べ物の匂いに誘われて寄ってきたり、虫がたかったりして不衛生です。使った食器や調理器具は、寝る前にきれいに片付けるか、頑丈なボックスに収納しておくのが鉄則です。
マナー違反と思われがち?焚き火やゴミ処理の問題点

キャンプ場でのトラブルで最も深刻なのが、焚き火やゴミの処理に関するマナー違反です。これらは単に「行儀が悪い」というレベルを超えて、自然環境を破壊したり、キャンプ場の閉鎖を招いたりする重大な問題です。絶対にやってはいけない行為をしっかり理解しておきましょう。
炭や燃え残った薪を地面に埋める
「炭は自然由来のものだから、土に埋めればそのうち分解されるだろう」と勘違いしている人が意外に多くいます。しかし、これは大きな間違いです。炭は炭素の塊であり、木材とは違って微生物に分解されることはほとんどありません。一度埋められた炭は、何百年もそのままの形で地中に残り続けます。
また、まだ熱を持っている炭を埋めることは、地中の根を焼いたり、後から来た人が踏んで火傷をしたりする原因にもなり大変危険です。使い終わった炭や灰は、必ず指定された炭捨て場に捨てるか、火消し壺に入れて自宅に持ち帰って処分するのが絶対のルールです。
プラスチックなどのゴミを焚き火で燃やす
焚き火の中に、コンビニ弁当の容器やペットボトル、ビニール袋などのゴミを投げ入れて燃やす行為も厳禁です。プラスチックを燃やすと、有害なガスが発生したり、嫌な臭いが周囲に充満したりして、他のキャンパーに多大な迷惑をかけます。
さらに、溶けたプラスチックが焚き火台にこびりつくと、掃除が大変になるだけでなく、焚き火台そのものを傷めてしまう原因にもなります。焚き火はあくまで薪を燃やして楽しむものであり、ゴミ焼却炉ではありません。ゴミは分別して持ち帰るか、キャンプ場のルールに従って正しく処理しましょう。
炊事場のシンクに残飯を流して詰まらせる
共用スペースである炊事場の使い方も、その人のマナーレベルを映し出します。鍋や食器に残った食べ残しや油汚れを、そのままシンクに流してしまうと、排水口が詰まって水が流れなくなってしまいます。また、配管に油が蓄積して悪臭の原因にもなります。
食器を洗う前には、キッチンペーパーやスクレーパーを使って汚れや残飯をあらかじめ拭き取っておくのが基本です。また、合成洗剤の使用が禁止されているキャンプ場もあるため、環境に優しい洗剤を持参するなどの配慮も必要です。次に使う人が気持ちよく使える状態にして立ち去ることが大切です。
直火禁止の場所で直接地面で火を焚く
地面に直接薪を置いて火を焚く「直火」は、ワイルドで憧れるスタイルかもしれませんが、多くのキャンプ場では芝生や微生物を保護するために禁止されています。直火禁止の場所で焚き火をする場合は、必ず焚き火台を使用し、さらにその下に「焚き火シート(スパッタシート)」を敷くことが推奨されます。
焚き火台を使っていても、熱が地面に伝わって芝生が焦げてしまうことがあります。一度焦げた芝生が再生するには長い時間がかかります。自然へのダメージを最小限に抑える配慮ができるかどうかが、にわかキャンパーと熟練キャンパーの大きな分かれ道です。
ゴミを持ち帰らず放置する、またはSAに捨てる
「来た時よりも美しく」がアウトドアの鉄則ですが、自分たちが出したゴミをサイトに放置して帰るなど論外です。また、帰りの道中にあるサービスエリアやコンビニのゴミ箱に、キャンプで出た大量の家庭ゴミを押し込んで捨てる行為も、社会的な問題となっています。
このようなマナー違反が続くと、ゴミ箱が撤去されたり、キャンプ場自体が利用禁止になったりして、結局は自分たちの首を絞めることになります。ゴミの処理方法については事前に必ず確認し、持ち帰りが基本であれば、匂いが漏れないような袋を用意するなどして責任を持って持ち帰りましょう。
車中泊派も要注意!車周りで目立つにわかキャンパーの特徴

車中泊もキャンプの一形態として定着していますが、道の駅やサービスエリア、RVパークなどでのマナー違反も目立っています。車という密室にいる安心感からか、周囲への配慮が欠けてしまうことがあるようです。ここでは、車中泊特有の迷惑行為について解説します。
エンジンをかけたまま長時間アイドリングする
車中泊において最もトラブルになりやすいのが、エンジンのアイドリングです。「暑いから」「寒いから」「スマホを充電したいから」といった理由で、夜通しエンジンをかけっぱなしにする行為は、周囲にとって大きな迷惑です。
エンジンの振動音や低周波音は、静かな夜には驚くほど響きます。また、排気ガスが隣の車内に入り込めば、不快なだけでなく一酸化炭素中毒の危険性すらあります。アイドリングストップは車中泊の基本中の基本です。暑さ寒さ対策は、エンジンを切っても使えるポータブル電源や電気毛布、扇風機、適切な寝具などで対応しましょう。
駐車場でテーブルや椅子を広げてキャンプ行為をする
道の駅や高速道路のサービスエリアは、あくまで「休憩・仮眠」のための施設であり、宿泊施設やキャンプ場ではありません。しかし、駐車スペースにテーブルや椅子を出してくつろいだり、ひどい場合にはカセットコンロでお湯を沸かしたり調理を始めたりする人がいます。
これは明らかな目的外利用であり、他の利用者の通行の妨げにもなります。このような行為が横行すると、「車中泊禁止」の看板が掲げられる原因となります。キャンプ行為を楽しみたいのであれば、必ずキャンプ場や、屋外での活動が許可されているRVパークを利用するようにしましょう。
夜間に何度も大きな音でドアを開閉する
車のドア、特にスライドドアやバックドアの開閉音は、「バン!」「ガガガッ」と周囲に大きく響き渡ります。深夜や早朝に、トイレや荷物の整理のために何度もドアを開け閉めされると、近くで寝ている人はその度に目を覚ましてしまいます。
夜間の出入りは最小限にし、どうしても開閉が必要な場合は、最後まで勢いよく閉めずに、半ドアの状態から手で静かに押し込む(イージークローザー機能があればそれを頼る)などの配慮が必要です。自分が出す音に対して敏感になることが、車中泊のマナーです。
ヘッドライトや室内灯で周囲を照らし続ける
夜間に駐車場に入ってきた車が、エンジンをかけたまま長時間ヘッドライトを点灯させていると、その光が他の車の車内に差し込み、非常に眩しく感じます。駐車位置が決まったら、速やかにライトを消す(スモールライトも含めて)のがマナーです。
また、最近の車のLEDルームランプや、車内で使用するLEDランタンも非常に明るいものが増えています。窓にシェードやカーテンをしていないと、車内が丸見えになるだけでなく、光が漏れて周囲の迷惑になります。夜間の光の管理は、プライバシー保護とマナーの両面で重要です。
公共の電源コンセントを無断で使用する
道の駅やサービスエリアのトイレ、洗面所などにあるコンセントを勝手に使用して、スマートフォンやポータブル電源を充電する行為は、「電気窃盗(盗電)」という犯罪にあたります。「少しだけならいいだろう」という軽い気持ちが、重大なトラブルを招くことがあります。
車中泊で電気が必要な場合は、事前に走行充電でバッテリーを貯めておくか、モバイルバッテリーやポータブル電源を持参するなど、自前で確保するのがルールです。公共の設備はあくまで施設管理や緊急時のためにあるもので、個人のレジャーのために開放されているわけではないことを理解しましょう。
脱「にわか」を目指そう!初心者でもベテランに見えるコツ

ここまで、少し耳の痛い話が続いたかもしれません。しかし、これらはすべて「知っていれば防げること」ばかりです。最後に、初心者であっても「この人はマナーが良くて素敵だな」と思われるための、ポジティブな行動のコツを紹介します。
隣のサイトの人に明るく挨拶をする
キャンプ場に到着して設営を始める前や、目が合った時に、隣のサイトの人に「こんにちは」「今日はお世話になります」と軽く挨拶をするだけで、印象は劇的に良くなります。挨拶ができる人は、それだけで「ちゃんとした人だ」と認識され、何か困ったことがあった時にも助けてもらいやすくなります。
また、挨拶を交わすことで、お互いに「どんな人が隣にいるか」が分かり、無用な警戒心やトラブルを防ぐ効果もあります。コミュニケーションの第一歩である挨拶は、キャンプ場というコミュニティにおいても最強の潤滑油となります。
事前に道具の使い方を練習しておく
新しいテントやタープを買ったら、キャンプに行く前に近くの公園(火気使用可否は要確認)や庭、あるいは室内で一度広げてみて、設営の練習をしておきましょう。ポールの通し方やロープの結び方を確認しておくだけで、現地の設営時間は大幅に短縮されます。
スムーズに設営を終えて、ゆったりとコーヒーを飲んだり景色を眺めたりしている姿は、まさにベテランの余裕を感じさせます。準備の時間は、当日の余裕に直結します。「予習」こそが、脱初心者の近道です。
「来た時よりも美しく」を徹底する
撤収時には、自分のサイトにゴミが落ちていないか、ペグの抜き忘れがないかを入念にチェックしましょう。そして、自分たちが出したゴミだけでなく、もし風で飛んできた他人のゴミがあれば、それも一緒に拾って帰るくらいの気持ちを持つことが大切です。
焚き火の跡をきれいに掃除し、地面をならして、次に使う人が気持ちよく設営できる状態に戻す。この「立つ鳥跡を濁さず」の精神を徹底できる人は、どんなに道具が安物であっても、心に一流のギアを持った真のキャンパーと言えるでしょう。
自然の音と暗さを楽しむ余裕を持つ
キャンプの醍醐味は、便利な日常生活から離れて、不便さや自然そのものを楽しむことにあります。夜は暗いのが当たり前、静かなのが当たり前です。過剰な照明で夜を昼のように明るくしたり、音楽で静寂を埋めたりする必要はありません。
焚き火の爆ぜる音、木々のざわめき、満天の星空。これらを五感で感じ取ろうとする姿勢を持てば、自然と声のボリュームは下がり、周囲への配慮も生まれてきます。自然に対して謙虚であること、それがスマートなアウトドアスタイルの神髄です。
にわかキャンパーの特徴を知り、マナーを守ってスマートなアウトドアを
今回は、「にわかキャンパー」と呼ばれてしまう特徴や、周囲に迷惑をかけやすい行動、そしてスマートに楽しむためのマナーについて解説しました。「にわか」であること自体が悪いわけではありません。誰もが最初は初心者であり、失敗を繰り返しながら学んでいくものです。しかし、知識不足や配慮の欠如が、他のキャンパーの楽しい時間を奪ったり、自然環境を傷つけたりすることは避けなければなりません。
高価な道具を持っていることよりも、挨拶がしっかりできること、ゴミを一つ残さず持ち帰ること、夜の静寂を守ること。こうした基本的なマナーを実践できる人こそが、本当の意味での「かっこいいキャンパー」です。
これからキャンプや車中泊に出かける皆さんが、この記事で紹介したポイントを少しでも意識してくだされば、きっとご自身にとっても、周りの人にとっても、最高の思い出になるはずです。マナーという最強のギアを装備して、素晴らしいアウトドアライフを楽しんでください。




